本研究課題を遂行させるにあたり、特にニコチン酸、ニコチンアミドの取り込み、および細胞内動態を解析するために、種々の予備的検討の結果、そのツールとしてキーとなる、アフィニティビーズとしては、ベリタス社のダイナビーズを用いてのニコチン酸、ニコチンアミドの結合因子の同定、また蛍光標識体としては、抗体を用いた免疫染色法による細胞内動態を解析するアプローチを採用することとした。また、これらの検討に加えて、ニコチン酸、ニコチンアミドによる細胞の応答が、種々の細胞において認められるかという点について、主に、顆粒球様細胞への分化誘導能を有している、ヒト急性前骨髄性細胞株、HL-60、そして赤血球様細胞への分化誘導能を有している、ヒト慢性骨髄性細胞株K562を用いて検討したところ、ニコチンアミドと、ニコチン酸の構造異性体である、イソニコチン酸において分化誘導が示唆された。また、ニコチン酸、ニコチンアミドは、酸化還元酵素の補酵素NADであり、それらの処理に対して、直接的に応答すると考えられる、NADおよび還元型のNADHについて解析を行ったところ、分化誘導過程において変動が認められ、分化の方向によりパターン性が認められた。さらに分化誘導に関連する遺伝子の発現におよぼす影響について検討したところ、ニコチンアミド処理において、c-mycの発現が低下する傾向にあり、CD38の発現については、イソニコチン酸処理において発現の上昇が認められた。
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