本研究課題を遂行させるにあたり、実際、取込まれたニコチン酸、ニコチンアミドが、どのような動態、局在を示し、そして制御を受けるかについて解明するために、蛍光誘導体化したニコチン酸、ニコチンアミドの作製を試みた。その結果、作製した標識体は、細胞内におけるニコチン酸、ニコチンアミドの動態を、可視化技術やフローサイトメトリーにより解析する目的においては、さらに検討する必要性が認められた。また、近年開発されたニコチンアミドに対する抗体を、本研究においても導入し、細胞内のどの部位に局在しているかなどや量的な解析を行うことで総合的な評価を行う。またアフィニティビーズによるビタミン結合因子の同定については、従来型のアガロースベースのビーズでは、非特異的結合因子も拾い事が明らかとなり、より特性の高い磁気ビーズの導入に至った。これらの結果を元に、次年度の研究実施計画を遂行していく。本課題の遂行により得られる意義としては、従来の栄養学的な手法に基づくビタミン学から、本課題のように分子生物学的、生化学的手法を取り入れることで、細胞レベルでのビタミンの動態を追究するといった、「分子ビタミン学」への確立に大きく貢献することが期待される。また昨年度の研究実績で得られた、ヒト白血病細胞K562におけるニコチン酸、ニコチンアミドによる分化誘導効果の作用機構についての詳細な解析も行った。その結果、従来、中心に検討を行ってきた、ヒト白血病細胞HL-60の場合とは分化誘導を示すビタミンが異なることが明らかとなった。
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