研究概要 |
今年度の主たる取り組み内容としては、ニコチン酸およびニコチンアミドをリガンドとするアフィニティービーズの作製とそれらに結合する因子の同定である。アフィニティービーズの作製にあたっては、まずはビオチン化標識試薬を用いて、ニコチン酸、ニコチンアミドのラベル化を行った。ビオチン化の確認は、HPLC分析によるリテンションタイムの変化より判断した。続いて、これらと各種動物培養細胞より得た無細胞抽出液と一定時間インキュベートした後、アビジン化磁気アフィニティービーズを用いて結合する因子を回収し電気泳動にて分離した結果、複数のバンドを得た。これらの解析については、本年度に本学附属施設に導入されたTOF-MS型質量分析計を用いて解析を進めている。ただ現状で得られたバンドの全てが、ニコチン酸、ニコチンアミドに特異的に結合している因子とは考えづらく、ラベル化に用いたビオチンと結合する因子であるという可能性も大いに考えられるため、今後の解釈には注意する必要がある。 さらに今回は、ニコチン酸、ニコチンアミドが細胞内でNADに変化し、そのNADを基質として利用する酵素群の細胞内局在の変化についても解析を行った。具体的には、特にDNA修復時に機能することが知られている、PARP-1,PARP-2に着目し、免疫染色法により解析した。その結果、DNA損傷処理に伴い、PARP-1は核内における局在の変化が認められ、PARP-2については、核内における局在の増加が認められた。これら酵素の動態を解析する事は、ニコチン酸、ニコチンアミドの細胞内動態を解析していくうえで、大きな情報をもたらす事が期待される。
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