申請者は、かねてよりニコチン酸、ニコチンアミドの新規生理作用並びに薬理作用の検索を目的として、様々な研究テーマを設定し検討を行ってきたが、その過程を経て、ある種の仮説を設定するに至った。すなわち、NADを基質とする生化学反応は、共通して、その前駆体であるニコチンアミドを生じ、それによるフィードバック阻害を受ける点である。ニコチン酸にはそのような作用はない。そこで種々の生命現象における、ニコチンアミドによる制御因子としての新たな役割の設定である。これまでの検討において、先に述べたように、ニコチンアミドによる様々な作用濃度はmMオーダーと比較的高濃度である。ここで新たな疑問が生じてきた。確かにニコチンアミドは水溶性ビタミンであるため、脂質二分子膜を透過しにくいためと予想されるが、申請者の個人的な考えとしては、ビタミンの1つであるニコチンアミドが、非選択的に取り込まれるとは考えにくい。何らかの機構を介して選択的に取り込まれ、細胞内で様々な機能を発揮している事が考えられる。そこで、申請者の過去の検討で得られた知見のひとつである、ヒト白血病細胞に対するニコチン酸、ニコチンアミドの分化誘導効果を実験系として選択し、本研究課題において、まず明らかにしていく目的としては、その取り込みを仲介すると想定される結合因子の同定が挙げられる。
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