肥満状態では、脂肪組織由来のMCP-1が脂肪細胞へのマクロファージの浸潤と活性化を誘導することで、アテローム性動脈硬化、インスリン抵抗性などの肥満に伴う炎症反応において重要な役割を果たしていることが示唆されている。そこで、肥満に伴う炎症性疾患の発症メカニズムの解明と日本型食品由来成分によるその制御を目的に、本年度はまず、炎症時の重要なメディエーターであるMCP-1と肥満との関連をMCP-1ノックアウトマウスを用いた動物実験および脂肪細胞とマクロファージを用いたin vitro実験において検討した。 MCP-1ノックアウトマウスに高脂肪食を給与したところ、体重変化や脂肪組織重量、血糖値に有意な差は認められなかった。本研究申請後に発表された報告によると、MCP-1ノックアウトマウスの脂肪組織では、その重量に有意な差はないもののマクロファージの浸潤が低下することが示されている。従って、MCP-1は肥満に伴う脂肪組織の質的変化に関与することが考えられた。 次に、肥大化脂肪細胞とマクロファージをin vitroにおいて共培養したところ、MCP-1の分泌は劇的に増加した。またここにさまざまな食品由来因子を添加したところ、柑橘類やトマトの果皮に多く含まれるナリンゲニン類や松樹脂に含まれるデヒドロアビエチン酸にMCP-1や炎症性サイトカインであるTNF-α、NOの分泌を低下させる効果があることが明らかとなった。 さらに本年度はこのような炎症性サイトカインの発現を制御する日本型食品由来成分を高感度で探索するために、ヒトMCP-1とTNF-αの転写調節領域をヒト単球由来THP-1細胞に導入しステイブルセルラインを得ることで、in vitroスクリーニング系を構築した。また、系の有効性は、MCP-1やTNF-αの発現制御に関わるPPARγリガンドの添加によって確認した。
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