研究課題
肥満状態では、脂肪組織由来のMCP-1が脂肪細胞へのマクロファージの浸潤と活性化を誘導することで、アテローム性動脈硬化、インスリン抵抗性などの肥満に伴う炎症反応において重要な役割を果たしていることが示唆されている。そこで、肥満に伴う炎症性疾患の発症メカニズムの解明と日本型食品由来成分によるその制御を目的に、本年度は、日本型食品の中でも特に植物(野菜)に着目し、昨年度に構築した「炎症性サイトカイン(MCP-1およびTNF-α)の発現を制御する食品成分を高感度で探索するin vitroスクリーニング系」を用いて抗炎症作用を有する成分の単離を試みた。その結果、まず、カレーの香辛料として知られるマメ科の植物のフェヌグリーク(Trigonella foenumgraecum)中から、有効成分として、ステロイドサポニンであるジオスゲニンが見い出された。ジオスゲニンは脂肪細胞とマクロファージの相互作用による炎症反応に対しても実際に効果を発揮したため、さらにその抑制シグナルについて検討したところ、マクロファージにおけるNFκBおよびJNKシグナルを抑制することが判明した。また、ナス(Solanum melongena)をエタノールおよびヘキサンで抽出後、HPLCで分画したフラクション中にもこれらの炎症性サイトカインの発現を強く抑制するフラクションが見出された。そこで、このフラクションをさらにHPLCで分画し、LC-MSを用いて候補成分を検討したところ、脂肪酸関連の候補物質が見出された。現在NMRによる候補成分の同定を行っているが、脂肪酸はリガンド依存性の核内転写因子であるPPARγのリガンドとなることで抗炎症作用を発揮することが報告されているため、このナス中から見出された成分が肥満に伴う脂肪組織での慢性炎症反応に対しても有効性を発揮する可能性が高いことが考えられた。
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Asia Pacific Journal of Clinical Nutrition 17
ページ: 126-130
BioFactors 33
ページ: 25-32