研究概要 |
ピーナッツ主要アレルゲンの精密な立体構造を決定し、アレルゲン性と立体構造の関連について検討を加えるため、主要アレルゲンの一つであるAra h 1について、まず大腸菌発現系を用いた試料タンパク質の調製を行った。具体的には、ピーナッツ登熟種子より調製したmRNAを鋳型としてRT-PCRを行い、Ara h 1のcDNAをクローニングした。このcDNAをタンパク質発現用プラスミドpET21dに挿入することにより大腸菌発現系を構築し、組換え型Ara h 1の大量発現と精製を行い、精製試料を用いて結晶化条件を検索した。その結果、0.1MのMES緩衝液(pH=6.5)中で、4%のPEG20000を沈殿剤としてAra h 1の単結晶を得ることに成功した。得られたAra h 1結晶のX線回折データを、Spring-8放射光施設において取得したところ、3.5Åまでのデータを収集し、空間群P1、格子定数a=91.17,b=95.98,c=157.85,α=107.59°,β=92.19°,γ=110.20°と決定することができた。現在、更に高分解能のデータを取得し、Ara h 1の立体構造とアレルゲン性の相関を精緻に解析するため、高品質のAra h 1結晶の調製を試みている。他方の主要アレルゲンであるAra h 3についても、cDNAをクローニングし、種々の大腸菌発現系の構築、組換え型Ara h 3の発現条件の検討を行った。その結果、Ara h 3のN-末端にマルトース結合タンパク質を融合し、大腸菌 Rosetta株を発現用宿主とした条件において、組換え型Ara h 3を可溶性タンパク質として発現させることに成功した。現在、組換え型Ara h 3の大量発現を試みており、精製条件の検討を行っている。
|