カテキン類と蛋白質との結合による複合体の形成は古くから知られている。カテキン類の舌や口腔粘膜のペプチドや蛋白質との結合による変性作用は、苦渋咲を呈し、緑茶においてはその味覚を決める重要な現象のひとつである。また、カテキン類は食品中の蛋白質とも強く結合するため、食品科学分野においては嗜好生だけでなく、調理、製造、加工あるいけ食品の機能性の損失の観点からも重要な現象である。このように、カテキン類と蛋白質との相互作用は一般に広く認識されているにも関わらず、カテキン類の示す生理作用の観点からはこれまであまり研究が進んでいなかった。 本研究では、前年度に構築したカテキン類と蛋白質との結合を簡便に検出する方法として、レドックスサイクリング染色法、ホウ酸結合ビーズによる精製法及び質量分析法を駆使し、標的蛋白質の探索及び結合構浩の解析を行った。培養細胞系を用いた検討により、グリセルアルデヒドー3-リン酸脱水素酵素(GAPDH)やグルタチオンS-トランスフェラーゼP1-1(GSTP1)がエピガロカテキンガレート(EGGg)の標的蛋白質のひとつであることを明らかとした。また、GAPDHやGSTP1とEGCgとの結合様式は共有結合であり、システイン残基が主要な標的部位であることを同定した。カテキン類の酸化安足性は、pH、抗酸化剤の有無、抗酸化剤の種類及び酸化控訴の有無により異なり、B環の水酸基の数が多いカテキン類ほど酸化安定性は低く、蛋白質中のシステインの反応性も高かった。 近年、プロシンポスファターゼやペルオキシレドキシンをはじめとする様々な蛋白質の機能調節に、活性酸素種や求電子性物質によるシステイン残基の酸化還元反応による構造変化が重要な役割を示すことが明らかとたり、システイン残基の修飾反応は生体内の重要なシグナル因子であることが提唱されている。本研究成果より、カテキン類は培養細胞系において標的蛋白質のシステイン残基と共有結合することが明らかとなったが、結合により蛋白質や細胞機能が調節されている可能性がある。今後は、カテキン類の示す生理作用の発現機構に共有結合反応が関運するか否かを検討する必要がある。
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