研究概要 |
本研究は, 凍結乾燥製品(医薬・機能性食品)の品質と製造工程とを相互に最適化するために, 予備凍結物質中に形成する濃縮体の固体構造を精緻な凍結操作によって制御しようと試みるものである。H19年度実施した凍結乾燥マンニトールに関する検討から得られた結果によれば、マンニトール結晶多形(マンニトールには一般にα、β、δ形の三種類の結晶多形が知られており、β(安定形)>α>δ(準安定形)の順に安定性が異なる。)が凍結条件に応じて凍結乾燥サンプル内に分布することが確認された。H20年度においては、当初の計画に従い、タンパク質を添加した場合のタンパク安定性に与える凍結条件の検討を行った。モデルタンパク質として乳酸脱水素酵素LDHを用い、LDHの活性が凍結乾燥時にどれだけ保持出来るか、またその活性が乾燥サンプル内でどのように分布するかについて調査した。まず、冷却速度が速い場合(-2℃/min)、平均活性は42.9%であるが、試料上部では60%を超える層があるのに対して下部は8%程度しか活性が確認されなかった。冷却速度が遅い場合(-0.5℃/min)平均活性は13.6%であり、冷却速度速い場合と比べて非常に小さい。活性が最も保たれている上部層でも20%程度しか活性が保持されていないことが確認された。これは冷却速度が遅い場合は大きなサイズの氷結晶が形成され、LDHの活性を失わせているためだと考えられる。一方、どの試料も最下部層の活性がほとんど無いことが確認されており、タンパク質活性に与える凍結の強い影響が示唆されている。
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