研究概要 |
本研究は,凍結乾燥製品(医薬・機能性食品)の品質と製造工程とを相互に最適化するために,予備凍結物質中に形成する濃縮体の固体構造を精緻な凍結操作によって制御しようと試みるものである。H19年度実施した凍結乾燥マンニトールに関する検討から得られた結果によれば、安定性の異なるマンニトール結晶が凍結条件に応じて凍結乾燥サンプル内に分布することが確認された。H20年度においては、当初の計画に従い、タンパク質を添加した場合のタンパク安定性に与える凍結条件の検討を行った結果、乳酸脱水素酵素LDHの活性は冷却速度等の凍結条件に大きく依存することが確認された。H21年度においては凍結乾燥酵素の酵素活性を、プロセスの操作によって制御可能とするための新規アイデアの創出に力を注いだ。(超音波を効率的に導入するための装置上の問題が深刻化したため、若干の方向修正の意味もあった。)研究タイトルにあるように、超音波による核形成の制御は凍結を制御し、活性物質の安定性を高める保護物質構造を作り出すひとつの要因となり得ることが昨年までの検討で明らかになってきている。しかし、核形成を制御した場合においても、本質的に制御しているものは凍結試料の温度履歴である。我々は温度履歴の操作によって、更に積極的に酵素活性を左右できるもうひとつの因子を組み込みたいと考えた。そこで本年度は冷却過程においてゲルを形成する物質を凍結保護物質とすることを試みた。「冷却速度」「ゲル化速度」との二つの動的因子がLDH活性へ与える影響を調査したところ、凍結界面におけるゲル形成の度合い(ゲル構造)が、酵素活性と強く結びついている結果を得た。凍結時の温度制御とパラレルに制御可能なゲル形成をタンパク質の安定化と結びつけることを見いだした本研究の成果により、凍結プロセス制御による乾燥製品の更なる安定化向上を図るための大きな指針が得られたと言えよう。
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