研究課題
若手研究(B)
本研究は、凍結乾燥製品(医薬・機能性食品)の品質と製造工程とを相互に最適化するために、予備凍結物質中に形成する濃縮体の固体構造を精緻な凍結操作によって制御しようと試みるものである。凍結乾燥マンニトールに関する検討から得られた結果によれば、安定性の異なるマンニトール結晶が凍結条件に応じて凍結乾燥サンプル内に分布することが確認された。また、タンパク質を添加した場合のタンパク安定性に与える凍結条件の検討を行った結果、モデルとして使用した乳酸脱水素酵素LDHの活性は冷却速度等の凍結条件に大きく依存することが確認され、これは凍結条件に応じてリオプロテクタントの固体構造の形成に起因するものであることが予測された。そこで凍結乾燥酵素の酵素活性を、プロセスの操作によって制御することを試みた。超音波装置の導入によって氷核形成温度を制御する試みは、凍結過程における温度履歴を制御するのに有効であることが分かったが(結晶性物質の結晶多形を変化させ得ることも確認できたが)、リオプロテクタントを含有させた系においてはさほど大きな影響を与えうるものと確認されなかった。むしろ、冷却過程においてリオプロテクタントが示す動的な構造変化が、含有するタンパク質の安定化には最重要因子であることを予見するに至った。冷却過程においてゲルを形成する物質を凍結保護物質とすることを試みたところ、「冷却速度」「ゲル化速度」との二つの動的因子がLDH活性活性と強く結びついている結果を得た。凍結時の温度制御とパラレルに制御可能なゲル形成をタンパク質の安定化と結びつけることを見いだした本研究の成果により、凍結プロセス制御による乾燥製品の更なる安定化向上を図るための大きな指針が得られたと言えよう。
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