研究課題
腸管の恒常性の破綻から罹患に至る様々な過程のうち、(1)腸内共生細菌に対する腸管上皮細胞の過剰応答、(2)マスト細胞の活性化の2つの過程に着目し、分子機構の解明と食品成分による制御を目的として以下の解析を行った。1. ヒト腸管上皮細胞(IEC)株を用いた解析の結果、IEC株においては5'領域のDNAメチル化とヒストン脱アセチル化により、ToU-like reccptor 4(TLR4)遺伝子の転写が抑制され、LPSに対する応答性が低く保たれることが明らかとなった。一方、TLRからのシグナルを負に制御するTollip遺伝子の5'領域中の転写制御に重要な配列に結合する転写因子の1つとしてEIHを同定した。Elf-1はヒト単球株ではTollip遺伝子の転写を抑制したが、IEC株では抑制作用を示さなかった。これらの機構が腸内細菌との共生の維持、そしてアレルギーの制御等に関与する可能性が考えられる。2. Bifidobacterium pseudocatenulatum JCM 7041(Bp)菌体あるいはTLR2の合成リガンドPam3CSK4の前処理により野生型マウス骨髄由来培養マスト細胞のlgE/抗原刺激時の脱顆粒が抑制された。一方、My D88^<-/->マウス骨髄由来培養マスト細胞では、Bpによる抑制効果は部分的にのみ認められ、Pam3CSK4による抑制効果は認められなかった。したがって、Bpによる抑制効果の一部がTLR2依存的であることが明らかとなった。さらに、Pam3CSK4はマスト細胞が誘導するin vivoにおける血管透過性の亢進をMyD88依存的に抑制した。また、Pam3CSK4処理により、IgE-抗原刺激時の細胞内Ca^<2+>濃度の上昇、Erkの活性化の抑制が観察された。以上の結果から、特定の腸内細菌あるいはプロバイオティクスがTLR2を介してマスト細胞のアレルギー応答を調節する可能性が示された。
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