小腸関連二次リンパ系組織の樹状細胞(DC)はRALDH2を発現し、ビタミンAからレチノイン酸(RA)を生成する能力を有する。RAはリンパ球の小腸へのホーミング特異性を付与するだけではなく、Foxp3陽性制御性T細胞の分化を促進することから、RALDH2陽性樹状細胞は腸管免疫の正と負のバランスを巧妙に調節していると考えられる。そこで、DCのRALDH2発現を誘導する腸組織環境因子を探索したところ、GM-CSFが重要な役割を担っていることを見出した。さらに、GM-CSFによるRALDH2発現誘導にはRA自身も必須であることを明らかにした。 本年度は生体内におけるRAによる腸管免疫バランスの調節機構を解明することを目的とし、ビタミンA欠乏餌摂取マウスを用いた個体レベルの解析を行った。 1、ビタミンA欠乏餌摂取マウスでは、小腸関連二次リンパ系組織のDCの頻度や細胞表面マーカーの発現パターンについては大きな変化が見られなかったが、RALDH2の発現と酵素活性が著しく低下していた。 2、SPFマウスの正常な小腸組織ではマクロファージが恒常的にGM-CSFを産生しており、ビタミンA欠乏餌摂取マウスでは、その発現量が低下していた。これはビタミンA欠乏によってDCのRALDH2発現が低下する原因の一つであると考えられる。 3、一方、小腸組織の血管内皮細胞や腸上皮細胞における細胞接着因子・ケモカイン(MAdCAM-1、CCL25、E-cadherin)発現は、ビタミンA欠乏によって低下していなかった。 以上の結果から、ビタミンAは生理的にもRALDH2陽性樹状細胞の機能発現に寄与していることが明らかとなった。ビタミンAは食品成分でもあるため、腸管環境のコントロールを比較的容易に行うことができる。そのため、得られた研究成果は機能性食品や医薬品の開発などに大きく発展することが期待できる。
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