研究課題
これまでの研究から、人為撹乱(山火事)後に成立したカバノキ科樹木で大発生しているフユシャクガやクスサンの食害パターンや樹木葉が有している防御機能について明らかにして来た。カバノキ科樹木の中でも、ウダイカンバを摂食したクスサン幼虫は他樹種を摂食した個体よりも成長速度が速く、最終サイズも大きい事が昨年度の飼育実験から明らかにされているが、本年度の調査では、クスサン幼虫による樹種選択実験を行い、クスサンは自身の成長に有利な樹種(ウダイカンバやクリ)を選択する能力を有している事が明らかになった。またその一方で、幼虫はいったん取り付いた樹木への執着心が強く、たとえ成長に不適な樹木(例えばシラカンバ)であっても、終齢になるまで取り付いた樹木を離れる事はなく、不適な葉を摂食し続けるという移動性の低い幼虫である事が明らかになった。これらの結果は、北海道で見られるような人為的(山火事)な影響によって成立したウダイカンバの純林は、移動性が低く、ウダイカンバの葉を好適な餌とするクスサンにとって非常に好適な環境であり、それ故に大発生が続いている事を示唆している。また、クスサンによる食いつくしを3年間受け続けたウダイカンバでは、春葉が小型化する一方で、夏葉や二次葉の防御形質が高まるなどして資源状況が悪化し、大きく樹冠が枯死する個体も出現した。
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Community Ecology 10
ページ: 225-235
小笠原研究 34
ページ: 9-31