研究概要 |
本研究の目的は,高分解能衛星データにオブジェクトベースの画像分割法を適用し,オブジェクト単位でテクスチャ特徴量を算出し,間伐遅れ状態にある人工林を広域に抽出することである。本年度は,要間伐林分把握の上で重要な因子であるスギ林分の本数密度に着目し,高解像度衛星データから得られるGLCM(グレイレベル同時生起行列)特徴量との関係を定量的に把握することを行った。具体的には,スギ密度試験地の地上測定データからスギ林分のコンピュータ・グラフィックス・モデル(CGモデル)を作成し,CGモデルから高分解能衛星データをシミュレートする手法を選択した。解析は,(1)無間伐林分におけるGLCMと本数密度の関係,(2)間伐直後におけるGLCMと本数密度の関係で行った。解析の結果,本数密度が増加するにつれて,均質性,角2次モーメントがは上昇し,コントラスト,異質性,エントロピーが上昇する傾向がみられた。また,間伐直後の林分では,本数密度が同程度の無間伐林分と比べ,均質性,角2次モーメントは上昇し,コントラスト,異質性,エントロピーは減少する傾向が見られた。最終的に,GLCM特徴量と本数密度には関連性があることが示された。また,GLCM特徴量は本数密度だけでなく,間伐で生じたギャップの影響を強く受けることが分かった。そのため,本数密度による詳細な密度把握は困難であることが予想された。一方で,GLCM特徴量(特に,均質性や角2次モーメント)を用いることにより,間伐の遅れた林分を把握できる可能性が示唆された。
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