研究概要 |
亜高山帯針葉樹林の林床に生息する落葉分解性の菌類の種多様性を明らかにするための野外調査を実施した。調査地は岐早県と長野県の県境部に位置する御岳山の標高2000メートルの原生林である。大型菌類については、子実体観察に基づいて9種の担子菌類が記録された。このうち8種はクヌギタケ属(Mycena)に属する落葉分解菌類であった。もっとも高頻度で観察されたベ二力ノアシタケは林床のコケ層から主に発生したが、他のクヌギタケ属菌はL2層に含まれる黒色化した落葉から発生していた。微小菌類についてはモミ属とカンバ属の落葉から洗浄法により分離を行い、種多様性、種組成、および落葉の分解段階にともなう変化と季節変化を明らかにした。モミ属とカンバ属の落葉からそれぞれ35種、42種の微小菌類が分離された。これら落葉上の微小菌類相の変動は季節変化により特徴付けられた。Trichoderma viride, Volutella ciliata, Mucor sp., Umbelopsis ramannianaの分離頻度は8月に増加し、これにより深度間、樹種間での菌類相の類似度は高くなった。6、10月のAbies針葉と6月のBetula落葉からはT. viride, V. ciliata, Thysanophora penicillioides, Trichoderma polysporumおよびMortierella alpinaが高頻度で出現した。10月のBetula落葉ではこれらの種は頻度が低く、かわってCladosporium cladosporioidesが高頻度で出現した。
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