研究課題
本研究は植物群落における熱・水・炭素循環過程と群落の成長・衰退過程との相互関係を明らかにすることを目的として行われており、様々な植生において、その環境応答特性を明らかにするために観測・モデル化の双方を行っている。対象群落は熱帯雨林、温帯常緑針葉樹林、温帯落葉広葉樹林、温帯寒地芝群落であるが、本年度は主に担当している熱帯雨林樹冠上でのフラックス観測および微気象観測を継続して行い、芝群落での観測結果をもとにモデル化を行った。また、対象群落として冷温帯常緑針葉樹林を追加し、同様の観測を行っている。以下に主要な成果を概説する。熱帯雨林群落である半島マレーシア低地フタバガキ林における樹冠上フラックスの観測結果から群落全体としての環境応答特性を解析し、本群落では乾期においても大気飽差に対する蒸散特性が変化しないこと、一年を通して午前と比較して、午後には二酸化炭素吸収量が低下することなどを明らかにした。芝群落に於いては、生態系呼吸量を葉・根・土壌の各コンパートメントに分離して測定した。各コンパートメントの呼吸量の温度依存特性を解析し、これまでに取得されている各コンパートメントの生長量・枯死脱落量のデータを併せて、成長・衰退モデルを新たに開発し、光合成・蒸散モデルとの結合を行った。モデルによる試算を行った結果、芝群落に於いては一年の間に植物のバイオマスが大きく変化し、単なる温度依存式では生態系呼吸量が推定できず、熱・水・炭素循環過程と群落の成長・衰退過程とのモデルによる結合がより正確な年間純生態系生産量の推定を可能とすることを明らかにした。
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