サクラ類は日本を代表する花木であり、サクラ並木として整備され観光名所となっている場所も多い。しかし、終戦直後に植栽された全国のサクラ並木は衰退期に入っているとの見方もある。木を適切に管理するためにも、衰退を客観的に診断できる手法の開発は必須である。本研究は、サクラ類に特化した活力度診断指標の開発を行うことを目的とした。本年度は以下の測定、分析を行った。クロロフィル濃度に基づいた活力度評価指標を開発するため、7月下旬にクロロフィル濃度の低い葉から高い葉までソメイヨシノは100枚、ヤマザクラは96枚のサンプルを採取し、分光反射率、吸収率、SPAD値の測定と、有機溶媒による定量を行った。それらの結果より、ソメイゴシノおよびヤマザクラのクロロフィル濃度を推定するためのハイパースペクトル指数を新たに開発した。また、7月下旬〜8月上旬にかけて、京都市の緑地において、ソメイヨシノ220本とヤマザクラ93本を選定し、葉の分光反射率、吸収率測定、SPAD値、活力度ランク評価および胸高直径の測定を行った。これらのデータから、葉のクロロフィル濃度と4ランク評価の各項目との相関の強さや、市街地におけるソメイヨシノおよびヤマザクラの葉の標準値を明らかにすることができた。また、航空機より京都市内のサクラ並木を観測したハイパースペクトルデータを解析し、ソメイヨシノおよびヤマザクラの活カランク評価を70%以上の正確さ(ファジー評価)で行うことが可能であることを明らかにした。
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