研究概要 |
本研究の目的は, これまで光や土壌条件で説明されてきた樹木の分布パターンを細根形成という, 樹木の地下部資源獲得行動から読み解こうという試みを行うことにあった. 森林生態系における樹木の立地に対応した空間分布様式を地下部資源獲得の様式を細根系の量的配分, および形態の違いから説明する前に, 樹木の分布パターンの把握を行い, 細根形態の測定方法の検討および予備調査を行うことになっていた. 方法論の検討について. まず, 既存の樹木根系の形態を把握する方法についての文献調査を行い, その生理学, 生態学的意義付けを行うためのレビュー論文を執筆した(平成20年業績). 樹木による地下部の資源獲得戦略行動を把握するためには, 立地傾度と植生の対応が明確な研究サイトを設定することが最も重要な点のひとつとなっている. 代表者異動の関係により, 計画の森林サイトへのアクセスが困難になったため, 適切なサイトとして, 勤務地に当たる九州大学の北海道足寄演習林を利用することとした. ここではモニタリング1000のコアサイトとして, 各種生態系研究のバックグラウンドデータが蓄積されており, 樹木の養分利用と根の関係を調べるのに適している. 20年度は新規の生態系モニタリング方形区を設置し, 北海道演習林の樹木を斜面方位の背腹性および地形傾度に沿って分布特性を明らかにした. さらに, 葉の窒素利用効率から各樹種について生葉の窒素濃度, 枯れ葉の窒素濃度, および葉の引き戻し率から明らかにし, 樹木の養分利用を立地と種の観点から明らかにした. これらの基礎データ収集により, 予定よりも大幅に計画が遅れたものの, 根の形について, 種の立地分布だけでなく, 葉の特性とも関連づけることができ, 立地傾度と樹木種の相互作用をより直接的に位置づけることができると考えられる.
|