研究概要 |
19年度は,森林タイプごとに倒木の量と構成を明らかにしたうえで多孔菌類(俗に言うサルノコシカケ)と菌食性昆虫の群集構造が森林間でどのように異なるかを評価することを目的としていた。しかしながら,当初予定していた調査地の使用が許可されなかったため,20年度にすみやかに上記の目的を達成するための基礎的調査として,原生林において発生する多孔菌類のリスト作成と昆虫のサンプリング方法の検討を行った。その結果,調査地とした原生林において,計1.2haの調査区と4kmにおよぶトレイル沿いでのサンプリングによって,既記載種57種と形態種59種の多孔菌が初めてリストアップされた。このことによって,調査地における多孔菌類の種を認識する上で重要なデータを提供することができ,今後の作業の円滑化を図ることができた。また,昆虫については,マンネンタケ科の一種Ganoderma australeに形成される昆虫群集を主たる対象に,総延長10km以上にわたり森林内から約20地点において計約200個の子実体を採集して昆虫を得た。その結果,昆虫相は地点間で大きく変化していなかった。多孔菌類上に形成される昆虫群集を調査するに当たっては,ごく少数の地点において形成されていた昆虫群集をその地域の昆虫群集の代表とみなして良い可能性をこの結果は示している点で,今後の調査を簡便に行ううえで非常に意義のあるデータである。 20年度は少なくとも原生林において,可能であれば二次林においても太さの異なる枯死木において倒木-多孔菌類子実体-昆虫群集食物網の構造を比較する予定である。
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