研究概要 |
新潟県魚沼栃尾又産のブナ苗が植栽された約110年生の北海道江別市のブナ人工林(約70本)において、既設の計12個の種子トラップ(開口部面積0.5m^2)から、定期的に内容物の回収を行い、実験室の持ちかえった後、種子を状態別に分別した。 種子の分別については、種子外部の食害痕から昆虫を同定する方法を採用し、あらかじめ種子食害の状態別形態図を種子食性害虫5種(ブナヒメシンクイ、ナナスジナミシャク、ブナメムシガ、ブナキバガ、ブナミノタマバエ)について作成し、同定を行った。2006年は6月に0.67個/m^2の落下が見られたが,すべてジェネラリスト昆虫であるナナスジナミシャクによる食害を受けていた。一方,2007年は214個/m^2の種子が落下したが,2006年と同様虫害率が高く,充実種子率は7.3%と低かった。虫害種子の加害種の内訳は,ナナスジナミシャクが54%,スペシャリスト昆虫であるブナヒメシンクイが36%であり,2種で全体の9割を占めていた。この結果は,北海道南部の七飯町ガルトネルのブナ林での結果と一致しており,北海道では東北地方のブナ林に比ベブナヒメシンクイの割合が低いことが示された。また、ブナメムシガとブナミノタマバエによる食害は認められたが、ブナキバガによる食害は認められなかった。 枝に残された雌花序痕から過去の開花履歴を調べるため、2007年9月に長さ12mの高枝切り鎌を用いて、8個体のブナ(胸高直径37.9〜85.8cm)から長さ約1mの繁殖枝をそれぞれ3〜7本、計38本を採取した。
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