近年やんばる地域で大量発生しているリュウキュウマツ枯死木がノグチゲラの営巣活動に対してエコロジカルトラップとして作用しているかを検証するため、初年度である平成19年度は、(1)マツ材線虫病発生地域におけるノグチゲラの営巣状況、(2)リュウキュウマツ枯死木を利用したノグチゲラの繁殖成績、(3)ノグチゲラ営巣木の特徴と営巣木周囲の植生について調査を実施した。 現地調査によるノグチゲラ営巣木の探索と過去の情報収集を行い、リュウキュウマツを利用した営巣情報を11例収集することができた。ノグチゲラが営巣したリュウキュウマツは全て枯死木であり、生立木への営巣は見られなかった。営巣に利用されたリュウキュウマツ枯死木は、全てに先折れがあり、小枝や1m以上の枝がみられなかった。過去に、沖縄島北部に設定されたマツ材線虫病調査のための固定試験地内で、枯死時期の明らかなリュウキュウマツ枯死木の再調査を行った結果、ノグチゲラに営巣利用されたリュウキュウマツ枯死木は、枯死後3年から4年以上経過したものであると推定された。聞き取りにより、国頭村周辺では、平成15年前後にマツ材線虫病が流行した時期があることが分かり、現在、ノグチゲラが営巣に利用しているリュウキュウマツの推定枯死時期と近い年代に、リュウキュウマツ枯死木の大量発生が起こっていた事が確認された。リュウキュウマツへの営巣のうち、営巣木の倒壊、捕食、雨水の浸入による繁殖失敗例が確認された。発見した営巣木の周辺と、同一林分内にランダムに設置した0.04haの円形プロット内の植生調査を一部完了した。
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