本研究の目的は、乾燥性島嶼生態系への移入樹種が、突発的な降雨に対してどのように水を利用しているかを評価することにある。平成20年は主に以下の実験・解析を行った。 (野外実験)小笠原の乾性低木林を構成する主要な在来種であるヒメツバキ、アカテツ、テリハハマボウと乾性低木林への移入樹種であるキバンジロウの、それぞれの灌木で、グラニエセンサーにより樹幹と樹幹流速の測定を開始した。同じ期間、土壌含水率と日射量を測定した。現在も調査を継続中であり、長期間の乾燥および突発的な潅水に対する樹幹流速の変化との関係を明らかにする予定である。 (人為的な乾燥-潅水に対するアカギ苗木の水利用特性の解明) 土壌の厚い土地へ進入するアカギの苗木に、人工的に乾燥-潅水処理を行い葉および樹幹の水分状態の変化を調べた。その結果、乾燥が進んでも葉の水ポテンシャルは低下せずに落葉した。地上部が枯死する固体もあった。樹幹木部の水分状態を低温走査型電子顕微鏡(cryo-SEM)を用いて観察したところ、乾燥によって道管に空隙が発生し、また潅水してもその空隙は残ったままであった。このことから、アカギは浸透調整能力が低く、また乾燥によるキャビテーションを解消できないことがわかった。従ってアカギは突発的な降雨による潅水を利用する事が出来ないと考えられ、アカギが小笠原の乾燥地に侵入できない原因の一つが示唆された。
|