今年度は、欧州諸国間の森林・林業助成額の比較分析レビューと、スイスおよびフィンランドにおける森林・林業助成策の実態調査を行った。なお、本研究は平成19年7月から研究代表者の育児休業等取得のため中断していたが、平成20年7月に再開した。 欧州諸国における助成額を施策目的別に比較すると、(1)山地保全や災害防止等の森林保全策に重点を置く国(スイス、チェコ等)、(2)技術指導、普及サービスに重点を置く国(ドイツ、ノルウェー等)、(3)森林計画や測量に重点を置く国(フランス等)、(4)生物多様性保全や保護林等に重点を置く国(フィンランド、オランダ等)などに分類することができ、森林面積あたりの助成額からは(a)突出して高い国(オランダ、スイス)、(b)中規模な国(ドイツ、フランス、ベルギーなど)、(C)相対的に低い国(フィンランド、ノルウェーなど)に分類できる。日本における森林・林業助成額は、ラフな試算では(1)-(a)型に該当するものと考えられる。この類型化をベースに、来年度以降、日本の助成策の相対的な位置づけや特質を解明していく。 また、上記分類を踏まえて、日本と相対的に類似するスイスと対照的な特徴を持つフィンランドにおいて、森林・林業助成策の実態に関する現地調査を行うとともに両国のEFFE研究担当者との意見交換を行った。その結果、政府の施策目的が曖昧なため助成策の分析や評価が困難となるケースが多い点、生物多様性保全策などの拡大や契約・交渉型の助成策へのシフトなど1990年代末から森林・林業助成策が大きく変化している点などが明らかとなり、欧州との比較による助成策の分析、評価に関わる示唆を得た。
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