研究概要 |
本研究は、欧州森林研究所(EFI)における共同研究プロジェクト「欧州における林業助成の評価(以下、EFFEと略記)」の成果を活用して、日本と欧州諸国における森林・林業助成策の比較分析を行い、今後、わが国に求められる森林・林業助成策のあり方を検討することを目的としている。平成21年度は、EFFEで示された欧州諸国の助成額データと日本の助成額の比較分析を行うとともに,前年度に行ったスイスおよびフィンランド調査を通じて収集した資料等の整理・分析を行った。 日本の森林・林業に対する助成額は,2000年以降,大幅に減少している。2006年度現在の日本の森林・林業に関わる公共投資の額は,森林面積あたりの額でみると,1990年代のスイスの助成額に近いことなどが明らかとなった。スイスにおいては,2004年に策定された国家森林プログラムにおいて,従来の助成策のあり方を根本から問い直す新たな助成原則が打ち出されており,様々な議論を呼んできた。そのなかで,私有林を多く抱えるカントン,ルツェルンでは,いち早くフォレスターの位置づけを変更する地域組織プロジェクトに着手しており,一定の成果を上げている。また,フィンランドにおいては,私有林支援体制の改革論議が進行中である。これら両国の取組やそのプロセスで交わされる議論は,日本の森林・林業助成策のあり方を検討するうえでも非常に示唆深い。 次年度は,森林・林業助成策の背景にある自然条件,社会・経済的な条件や法制度的な条件などを充分に踏まえながら,これまでの成果を掘り下げて検討し日欧比較分析の取り纏めを行う。
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