研究概要 |
本研究は、欧州森林研究所(EFI)における共同研究プロジェクト「欧州における林業助成の評価(以下、EFFEと略記)」の成果を活用して、日本と欧州諸国における森林・林業助成策の比較分析を行い、今後、わが国に求められる森林・林業助成策のあり方を検討することを目的としている。最終年度である平成22年度は、森林・林業助成策の背景にある自然条件,社会・経済的な条件や法制度的な条件などを踏まえ,これまで行ってきた日欧比較分析の取り纏めを行う。 森林・林業に対する助成策の日欧比較から,日本は公共投資による助成額が極めて高額であること,一方で普及指導等に対する支出が相対的に低めである点が明らかとされた。また,現在,欧州諸国ではニューパブリックマネジメントの思想に基づいた公務員削減や組織再編,助成策のあり方の見直し等が行われており,林業経営への支援策に関わっては,組織設立等の初期段階に限定した助成や成果に応じた報償的な助成などの手法が導入されている点などが明らかとなった。また,設立される地域組織は,目的や人員,設備等がシンプルであり,最小限の投資で付与された機能を果たしている。日本においては,森林組合がまさにそうであるように,多様な機能をもった組織を通じて多様な目的を併せ持った施策が講じる助成策が多いが,助成策の有効性,とりわけ経営的な判断に基づく経済活動を支援するにあたっては,これら欧州型の助成策のあり方が大いに参考になるものと考えられる。
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