研究課題
1. アカマツ天然集団における5年間の林分構造の推移(岩泉ほか2009)天然集団における遺伝的動態の把握に先立ち、当集団内に設定した林木遺伝資源モニタリング試験地(0.28ha)において、2001年〜2006年の5年間での林分構造の変化を解析した。優占樹種であるアカマツの生育本数密度は5年間で646.4本/haから582.1本/haへと約1割減少し、年平均枯死率は2.1%とやや高い割合で推移した。アカマツ個体の枯死が見られたサブプロット群(D群)と見られなかった群(S群)間で樹木個体の成長を比較したところ、D群においてアカマツ1個体当たりの胸高断面積の増加率が大きかった一方で、他の樹種の増加率には群間で有意差は見られず、現時点では、他の樹種の成長に対するアクマツの枯死の影響は見られなかった。2. アカマツ天然集団における5年間の遺伝子流動(Iwaizumi et al. 2009)上記集団において、花粉飛散と種子散布の両者を介した遺伝子流動やその遺伝的寄与、年次変化を把握するため、2003年〜2007年の5年間で採取された自然散布種子(計1,709種子)を対象に、胚と雌性配偶体(種子親由来の半数体組織)の組織別にDNA分析を行い、正確な両由来親の特定解析を行った。散布種子数は5年間で57.6個/m^2(2006年)〜318.0個/m^2(2003年)の間で変化し、2003年が結実の豊作年であった。調査地内で由来親が特定されず、100m以上の飛散・散布距離と推定された種子は、花粉親では5年間で63.3% (2004年)〜72.3%(2003年)であったのに対し、種子親についても17.7%(2005年)〜25.7%(2003年)であり、花粉飛散だけでなく種子散布も介した活発な遺伝子流動が5年間を通じて観察された。また、集団外からの遺伝子流動は花粉親・種子親ともに2003年で大きく、豊作年でのより大きな遺伝的寄与が示唆された。
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林木の育種特別号
ページ: 9-12
Botany 86
ページ: 576-586
林木育種情報 1
ページ: 4-5