本研究では紙と機能材料を複合化する新しい手法として、ナノ界面制御技術を利用して紙表面上でナイロン膜を直接合成・定着させることを試みた。電子顕微鏡およびFT-IR解析の結果、本手法により紙表面上でのナイロン膜の生成が確認できた。 有機溶媒にシクロヘキサンを用いて界面重合処理した場合、カプセル状のナイロン膜が形成した。カプセル径を測定した結果、エチレンジアミン濃度2.5%では約0.50μm、5%では約0.65μm、10%では約0.78μm、25%では約1.07μmのマイクロカプセルが生成し、エチレンジアミン濃度の増加に伴い、カプセル径が大きくなる傾向を示した。 有機溶媒としてシクロヘキサン : クロロホルム=3 : 1混合液を用いて界面重合処理を行った場合、エチレンジアミン濃度の増加に伴い膜形態が変化することが明らかとなった。エチレンジアミン濃度2.5%を用いた場合では紙表面上に多孔状のナイロン膜を形成した。それに対し、エチレンジアミン濃度25%を用いた場合にはファイバー状のナイロン膜を形成した。前者の多孔状構造の孔径は約1.66μmだった。後者のファイバー状高分子のファイバー径は約0.39μm(=390nm)でサブミクロンサイズのナノファイバーだった。エチレンジアミン濃度2.5%の調製条件で多孔状構造だった膜は、5%ではドーム状の構造、10%ではマイクロメートルオーダーのファイバー状高分子、25%ではナノファイバーで構成されるナイロン膜を形成した。ナノファイバーおよび多孔状構造の形成に関しては、拡張係数以外にエチレンジアミンおよび二塩化テレフタロイルの油相および水相におけるそれぞれの平衡分配係数、合成したポリマーの重合度、紙の表面自由エネルギーなどの因子が存在すると推測される。
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