今年度行った研究を以下に示す。 1)PGCsの移動能変化(ゼブラフィッシュ) 10体節期、15体節期、20体節期、25体節期、それぞれの胚からPGCsを単離して胞胚期の胚に移植を行い、各発生段階のPGCsの移動能力に差が認められるか検討した。その結果、発生段階が進行するにしたがい、PGCsの移動率が低下することが明らかとなった。PGCsの移動能力はPGCs内在因子によって決定される事が示唆される。 2)cxcr4による移動能力延長の試み。 cxcr4遺伝子を強制発現させることによりPGCsの移動能力の延長を試みた。GFP・cxcr4 3'UTR mRNAを合成し、PGCsでのcxcr4の強制発現を行った。cxcr4を不活化した卵へこのRNAを顕微注入したところ、PGCsの移動能をレスキューできた。しかし、このcxcr4-PGCsを単離し移植したところ、移動能力の延長は認められなかった。PGCsの移動能力持続期間はcxcr4以外の要因も関与することが示唆される。 3)異魚種に移植されたPGCsの移動能と生殖腺形成の有無 ゼブラフィッシュ、キンギョ、ドジョウ、パールダニオ、ウナギ、メダカのPGCsを可視化・単離し、ゼブラフィッシュ胞胚期胚盤へ移植した。この結果、キンギョのPGCsは59.8%の移動率を示したものの、ゼブラフィッシュ同種間の移植では28.4%の移動率しか認められず、系統関係とは無関係な移動率の値を示した。各魚種の卵径と移動率を比較したところ、多きな卵を持つ魚種のPGCsは高率で移動する傾向を示した。一方、キメラの系統的距離が離れるにしたがって配偶子の形成不全が生じたことから、生殖腺形成能に関しては生理的条件が類似していることが重要であることが分かった。
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