ほ乳類では獲得免疫系の活性化はT細胞が活性化されることにより始まる。そのT細胞を活性化する役割を担っているのが抗原提示細胞である。これらは、主に樹状細胞、フマクロファージ、B細胞からなることが知られている。しかし、魚類では獲得免疫系の活性化機構は長らくブラックボックスであった。最近のゲノム情報を利用した研究などによりT細胞に関する情報は蓄積されつつあるが、抗原提示細胞については不明である。本研究ではAPCの同定とその機能解析を通して、獲得免疫系の活性化機構に迫る。 トラフグゲノムデータベースを利用して、抗原提示細胞のマーカーとなる共刺激分子B7ファミリー分子のcDNAクローニングを行った。トラフグでは少なくとも3種類のB7ファミリー分子が存在していた。さらに、ほ乳類では抗原提示細胞の中でも最もT細胞活性化能の高いことが知られている樹状細胞のマーカー分子のcDNAクローニングをトラフグで試みた。魚類ではいまだ樹状細胞といえる細胞は同定されていないが、樹状細胞のマーカー分子の、cDNAクローニングに成功した。さらに、これらの抗原提示細胞ヤーガーの遺伝子は免疫応答の中心となる2次リンパ器官で発現しているととが明らかになった。 次に、B7分子の配列情報をもとに組み換え体とそれを抗原とした抗体を作製した。これらを使用して、B7分子が活性化したT細胞に結合すること、抗B7抗体が活性化したマクロファージに結合するが、リンパ球には結合しないことを明らかにした。これらの結果はマクロファージ上のB7分子が活性化したT細胞上の受容体に結合することを示唆するものである。 ほ乳類ではCD8陽性の貪食細胞が抗原提示細胞であることがわかっている。そこで、抗CD8抗体を使用したFACS解析やMACS解析を行い、ドラフグにもCD8陽性の貪食細胞が存在することを明らかにした。
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