昨年度までに魚類でも補助刺激分子、B7を介した補助刺激によりT細胞の増殖が制御されることを明らかにした。ほ乳類ではB7により刺激を受けたT細胞は様々なサイトカインの産生を制御することにより、T細胞自身の増殖の制御を行っている。そこで、本研究では同定した3種類のトラフグB7によりサイトカイン産生が制御されているかどうかを定量的PCRにより調べた。その結果、抑制的に作用するB7では免疫系を抑制的に制御すると考えられているサイトカインであるIL-10の発現が増加した。一方で、促進的に作用するB7はT細胞によるIL-10の産生を抑制すると同時に、T細胞増殖を促進すると考えられているIL-2の発現を増加させた。これらのことから魚類においてもB7がT細胞のサイトカイン産生を制御することによりT細胞の増殖を調節していることが示された。昨年度までの結果と考え合わせると、魚類の活性化された単球上に発現するB7はT細胞のサイトカイン産生を制御することにより、獲得免疫系の制御において中心的な役割を担うT細胞の増殖を制御していることが明らかになった。これらの結果は魚類にも機能的な抗原提示細胞が存在することを示した初めての成果であり、Journal of Immunology誌に掲載予定である。 本研究ではトラフグにはCD8陽性単球が存在することを見いだしているが、本年度はこの細胞を単離し、その性状を解析した。この細胞は活性化によりCD8を表出し、樹状細胞マーカーとして知られているCD83やCD205遺伝子や抗原提示に関わるMHC class IIα遺伝子を発現するようになること、またラテックスビーズを貪食する能力演あることが示された。また、蛍光染色により、樹状の突起を有していることが示された。これらの結果は本細胞が魚類の樹状細胞であることを示唆するものである。
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