フィールド調査の結果、マアナゴは東京湾で貧酸素と定義される溶存酸素量2.5ml/1以下においても生息が確認された。19年度は貧酸素水塊の終息が早く、変死したマアナゴとの遭遇回数が少なくまたフィールドにて変死にいたる溶存酸素量を測定できなかった。そこで、室内にて貧酸素状態を作り実験を行ったところ、1.5ml/1辺りから狂奔行動に陥り、マアナゴは互いにかみ合うことで、漁業者の指摘するものと同様の体表の傷を確認することが出来た。また、第11回マナゴ漁業資源研究会にて大阪湾のマアナゴ資源研究者と情報交換したところ、マアナゴは単純に貧酸素だけではなく、硫化水素などその他の要因が新たに考えられた。20年度に当たっては、この点についても調査をする必要がある。溶存酸素量と漁穫情況については、溶存酸素量3ml/1以上の溶存酸素が漁具浸漬中に一時的に低下するような海域で、相対的に漁獲量が高くなる傾向が見られた。これは、マアナゴが溶存酸素の変化に併せて漁場を移動していることを予見するものと考えられた。この結果からインターネット上で公開されている東京湾貧酸素水塊分布予想図を活用により、漁場選定の効率化の可能性が示唆された。さらに、実験遂行期間中に、漁具にいつマアナゴが入筒するのかということも併せて記録することを試みた。しかしこの実験では1個体の入筒時刻のみしか記録できなかったため、溶存酸素の変化と入筒の関係については明確にすることができなかった。環境と入筒時刻の関係については20年度の実験で改めて調査を検討している。19年度の実験では、各種データロガーを使用することで連続的な漁場環境の変化と漁獲の関係を明らかにすることに成功した。今後はこのデータを蓄積することで、東京湾における重要魚種の一つであるマアナゴの環境変化に対する動態の解明が期待される。
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