研究概要 |
定置網における海亀混獲個体の死亡削減を目的として,箱網の天井網部に装着する脱出装置が考案されている。こうした装置に海亀を効率よく誘導するために,天井おか綱を傾斜させた実験用箱網内での海亀の行動を観察し,その行動制御の可能性を検討した。 実験に用いた箱網の形状は,底面8m×8 m, 高さ1mの箱型の網(以後,箱網),同網の天井網中心部を10°の傾斜で引き上げた網(以後,天井部10°網),底面8m×8mに20°で天井網を配した四角錐型の網(以後,天井部20°網)の3種類であり,これらの網を八重山栽培技術開発センターの屋外水槽(10m×10m×2.1m)に設置した。実験にはアカウミガメの飼育個体5頭(直甲長42.8cm-50.0cm)を用い,箱網内に入れたアカウミガメ1個体の行動を,網の上方から撮影したビデオカメラと背甲に装着した小型水深計(アレック電子社製)で記録した。得られた映像からアカウミガメの頭部の水平位置を5秒ごとに記録し,移動軌跡と滞在頻度を求めた。 実験の結果,いずれの網においても海亀は,実験開始から5分間程度は網内の側面付近で遊泳・滞在する場合が多いものの,その後,全ての個体で頭部を上に向けて天井網を突き上げる行動が見られた。こうした突き上げ行動は,箱網および天井部10°網では網の側面付近で生じ,突き上げる位置の時間経過に伴う変化はほとんど見られなかった。一方,天井部20°網では,天井網を突き上げながら中央部(頂点)へ移動していった。天井網に傾斜をつけることで,突き上げ行動を行う海亀を誘導できる可能性が示された。
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