研究概要 |
本年度では, 箱網の天井たに装着して海亀を網外へ脱出させる装置を考案し, 試作した脱出装置を試作して海亀の脱出実験を行い, 脱出の可否, および脱出時の行動を調べた。 試作した脱出装置は, 一辺1.5mのトリカルネット(タキロン社製N-24, 以後トリカル)の中心部を一辺1.0mの正方形を切除して設けた脱出口と, これを覆う一辺1.05mの正方形の扉で構成されている。扉の装着部分の一部をトリカルに重ね合わせることで, 押し開けられた扉はトリカルの復元力で自動的に閉じる。底面3m×3m, 高さ約1.5mの箱型の網の天井部に, 扉の重ね合わせ幅を5, 10, 20cmに設定した脱出装置を装着して実験に供した。実験にはアカウミガメの飼育個体13頭(標準直甲長48.8-81.2cm,甲幅40.1-65.3cm)を用い, 網内に入れたアカウミガメ1個体の脱出の成否を記録するとともに, 脱出時の行動を網の上方と測方からビデオカメラで撮影し, 脱出までの経過時間を計測した。 計50回の実験すべてにおいてアカウミガメは脱出に成功した。 脱出時には, 頭部や前肢で扉を持ち上げながら, 水面へ向かって直線的に遊泳して脱出する場合, あるいはその隙間から体をひねるようにして脱出する場合が見られた。大型の個体では, 頭部や前肢を用いずに, 甲羅で扉を持ち上げて脱出する場合が見られた。重ね合わせ幅が小さいほど, また大型の個体ほど, 脱出に要する時間は短い傾向にあった。漁獲物の逃避を防ぐために, 扉の閉鎖に要する時間を短縮できる重ね合わせ幅20cmの場合においても, 小型の個体は十分に脱出が可能であった。
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