研究概要 |
中層・底層定置網の箱網に迷入した海亀を網外に逃避させるために,脱出口とそれを覆う扉で構成される海亀脱出装置と,天井網の傾斜により本装置へと海亀を誘導する手法による海亀脱出支援システムを考案した。本研究では,アカウミガメ,アオウミガメ,タイマイを用いて,本システムを備えた実験用箱網内における海亀の行動と脱出の成否を調べた。 実験には,アカウミガメ11個体(甲長67.6-75.6cm),アオウミガメ6個体(同38.6-64.4cm),タイマイ12個体(甲長45.4-57.5cm)を用いた。2m×2mのトリカルネットの中心部に設けた1m×1mの脱出口と,これを覆う長方形の脱出扉で構成される脱出装置を天井網の中央部に装着し,この天井網中央部に向かって天井網に約20度の傾斜を配した実験用箱網を屋外水槽(10m×10m×2.1m)内に設置し,実験網内に入れた海亀1個体の時刻別位置を水中および網の上方からビデオカメラで撮影し,海亀の行動と脱出の成否を調べた。 実験に用いた全ての個体において,頭部を上に向けて体軸をほぼ垂直にしながら天井網を突き上げる行動(以後,突き上げ)が見られ,その頻度は時間経過に伴って高くなった。アカウミガメは天井網を連続して突き上げながらより浅い方に誘導されるなどして,またアオウミガメは天井網の傾斜に沿って遊泳して脱出装置に遭遇し,全ての個体が脱出に成功した。一方,タイマイでは連続した突き上げはほとんど見られなかった。天井網の傾斜に沿って移動して脱出装置に遭遇する例は多く見られたものの,脱出扉を連続して強く突き上げることがないために,脱出に成功した個体は約半数であった。
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