本研究の目的は、漁獲圧の異なるホッカイエビ個体群を対象にして、体サイズ(メス)選択的な漁獲に起因した種内の遺伝的変異および形質劣化を証明することである。2年計画の初年度にあたる平成19年度は、まず、ホッカイエビの遺伝距離を測定する上で必要となるDNAマイクロサテライト遺伝マーカーの開発を行い、7つの遺伝子座で6から20の多型が検出できる有用なマーカーを開発することができた。次に、開発したマーカーの一部を用い、メスひと腹の受精卵における父系を解析したところ、1匹のメスは複数のオスの精子を利用して受精していることが明らかになった。しかし、まだサンプル数が十分でないものの、多型には上限がある傾向も見られた。このことはメス選択的に漁獲するホッカイエビ漁では、繁殖できないオスが多数残存する可能性を示唆している。北海道東部の5個体群およびユジノサハリンスクの1個体群を対象に野外調査を行った結果、現時点では、漁獲圧が高い個体群ほど全てのコホート(同一生まれ群)において平均体長が小型化し、さらに同じ大きさのメスであっても、産出する卵数かつ、または卵サイズが、漁獲圧に応じて減少する傾向にあった。この傾向が環境要因であるか、遺伝要因であるかは現時点ではまだ定かではないものの、後者の影響である可能性が強く示唆された。以上の結果から、初年度の研究計画はほぼ達成することができ、かつほぼ予想通りの結果が得られていると言える。
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