本研究の目的は、漁獲圧の異なるホッカイエビ個体群を対象にして、体サイズ・メス選択的な漁獲に起因した種内の遺伝的変異および形質劣化を証明することである。平成20年度は、まず、ポッカイエビの遺伝距離を測定する上で必要となるDNAマイクロサテライト遺伝マーカーの開発を継続し、8つの遺伝子座で6から20の多型が検出できる有用なマーカーを開発することができた。これらのマーカーを用いて遺伝的多様生を検証したところ、数十kmスケールで隣接する個体群間で遺伝的多様度は大きく異なっていた。漁獲圧との関係の明言には至らなかったが、その可能性は十分に推察された。北海道東部の5個体群を対象に野外調査を行った結果、漁獲圧が高い個体群ほど全てのコホート(同一生まれ群)において平均体長が小型化し、さらに同じ大きさのメスであっても、ふ化した子供の形質が、漁獲圧に応じて低下する傾向にあった。実験の結果、新たな課題が発見されたが、この傾向はほぼ遺伝要因であると推察できた。以上の結果から、今年度の研究計画は達成することができ、かつ概ね予想通りの結果が得られたと言える。
|