研究概要 |
紅藻スサビノリ葉状体の栄養塩類の取込みに重要な役割を果たすと考えられる硝酸イオントランスポーター(NRT), アンモニウムイオントランスポーター(AMT), 尿素トランスポーター(UT1及びUT2)遺伝子を対象として, 色落ち誘導した葉状体における各遺伝子発現を調べた. その結果, 各遺伝子発現は色落ち誘導後2日で急増し, その後も高い発現レベルを維持し続けることが明らかとなった. なお, 色落ちにより特に著しく発現誘導されるUT2遺伝子は, 貧栄養環境に対する応答・適応に特に重要な役割を果たしていることが考えられた. 次に, 色落ち葉状体に種々の窒素源を添加し, 各遺伝子の発現応答性を調べた. その結果, 各遺伝子は有機態窒素源よりも無機態窒素源に対して顕著な発現応答性を示し, 無機態窒素源添加後26時間で, 各遺伝子発現が大きく抑制されることが明らかとなった. また, スサビノリ葉状体の環境応答や生殖細胞形成に関与していると考えられるheat shock protein 82(HSP82), HSP90, mitogen-activated protein kinase(MAPK), SNF1-related protein kinase(SNF1-PK), Gタンパク質(sGTPase)遺伝子を対象として, 生殖細胞形成期の葉状体における各遺伝子発現を調べた. その結果, MAPK及びSNF1-PK遺伝子は成熟初期葉状体で, sGTPase, HSP82, HSP90遺伝子は成熟誘導及び成熟葉状体で発現増加することが明らかとなった. 次に, 抗MAPK抗体を用いて生殖細胞形成期の葉状体切片に対して免疫染色を行った. その結果, スサビノリMAPKは成熟誘導及び成熟初期葉状体の細胞内に多く蓄積されることが明らかとなった.
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