研究課題
セルロースに次ぐ莫大なバイオマスであるキチンの有効利用を目指して研究を進める中で、これまでに海洋細菌Vibrio protrolyticusが速やかにα型結晶キチンを分解すること、それが当該海洋細菌の分泌するキチナーゼによること、さらにその一次構造を明らかにしてきた。この海洋細菌由来キチナーゼの大腸菌リコンビナントのSDS-PAGEゲル状の分子量が明らかに理論値よりも大きいことから、何らかの修飾を受けている可能性が高いと考え、研究を進めた。すでに過年度中に、当該リコンビナントタンパク質がWGAを用いるレクチンプロッティングにより陽性反応を示すことを明らかにしたが、当該年度では、さらにConAを用いるレクチンプロッティングを試みるとともに、糖鎖修飾条件の検討および糖鎖修飾部位の絞り込みを試みた。まず、修飾条件の検討であるが、当該リコンビナントはコールドショックにより発現誘導を行う系を用いているが、その発現誘導直前に低温(氷冷)で数時間保持する必要が認められた。発現誘導直前に低温で保持せずに得たリコンビナントでは、WGAおよびConAの陽性反応は認められなかった。ただし、発現誘導直前の低温処理を行ってもWGAおよびConAの陽性反応が観察されなかったり、また、発現タンパク質の回収を極力少ないステップ数で行う必要も認められ、当該修飾が不安定なことが推測された。次に糖鎖修飾部位の絞り込みについては、850アミノ酸からなる当該リコンビナントキチナーゼの一次構造のうち、C末端側250アミノ酸を欠損するリコンビナントを作製し、WGAおよびConAを用いるレクチンプロッティングを試みた。その結果、C末端側欠損リコンビナントでもWGAおよびConAの陽性反応が認められ、この領域中に糖鎖修飾部位が存在する可能性が示唆された。
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J. Appl. Microbiol (印刷中)
J. Appl. Glycosci 2
ページ: 157-164