研究概要 |
本研究の課題は,市場制度や経済発展水準の異なる二つの国,具体的には,中国とわが国の農村共有資源管理を対象として,両国の比較を通じて,ソーシャル・キャピタルが農村共有資源管理に果たす役割を明らかにすることにある。 本年度は,わが国の農村共有資源,とりわけ農業集落の農業用用排水路や農道を対象として,その管理を目的として実施される集落の共同行動の成立要因を検討した。検討に際しては,全農業集落を調査対象として実施される『2000年農林業セシサス農業集落調査』の個票データを用い,特に集落規模や集落の社会的異質性ならびにソーシャル・キャピタルを醸成する役割を果たすと考えられる,集落め寄合が共有資源管理に果たす役割に着目して,分析を行った。 その結果,(i)集落戸数や非農家率と共有資源の管理水準の間にはU字型や逆U字型で表される非線形の関係が存在し,集落戸数の増加や非農家率の大幅な高まりは管理水準を低下させる方向に作用すること,(ii)集落の寄合によって蓄積されるソーシャル・キャピタルは,共有資源の管理水準を高める役割を果たすこと,(iii)集落社会の多様性や分極化は,共有資源管理に影響を及ぼさない一方で,集落内農家の経営規模の多様化や二極化は,共有資源管理に影響を及ぼすことから,集落社会そのものよりもしろ,農家集団のあり方が共有資源の管理水準に強い影響を及ぼしている可能性があることがわかった。以上の結果について,関連学会において口頭報告を行った。また,これらの結果は学術雑誌等を通じて公表予定である。
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