研究概要 |
本年度においては、第一に戦後日本における出移民政策に関する研究、および現在の日系人労働者に関する研究の両者についてサーベイを行った。その結果、(1)戦後移民政策研究においてはそれに先立つ国策移民たる満洲移民政策との連関について充分に検討されていないこと、(2)日系人労働者研究においては戦前の出移民と現在の入移民を直結して捉えており戦後移民がまったく視野に入っていないこと、(3)しかし日本の入国管理体制では世代により在留資格が左右されるため、戦後移民の存在抜きでは現在の入移民現象を説明できないこと、の3点を明らかにした。この成果は、ITO Atsushi"Emigration Policyin Postwar Japan : AnAspect of Agricultural Policy and Historical Context of Japanese Brazilian Immigration"としてThe 8th Conference of the East-Asian Agricultural Historyにおいて発表された(2008年9月20日、南九州大学)。 第二に、以上の論点を実証するため、外交資料館にて戦後移民に関する外交文書の資料調査を行った(2009年3月25日・26日)。本資料の本格的な分析は来年度に予定している。 なお、前年度の研究成果である伊藤淳史「史学・経済史学の研究動向」(『年報村落社会研究』第43集)が2008年4月に公刊された。また、西川長夫氏(立命館大学名誉教授)を中心とするプロジェクト「戦後の農民運動と農村の変容」の研究成果として伊藤淳史「松下清雄(渡辺武夫)関連記事目録」(『立命館言語文化研究』第20巻第2号)が2008年11, 月に公刊された。
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