本研究では、近現代日本における人口移動を考察する際に、戦前・戦時と戦後との連関に注目しつつ、「農林省ライン」から接近をはかってゆく。研究は文献資料の収集・整理をもとにした分析を中心として進められたが、資料収集としては、外務省外交史料館(東京都港区)および那須文庫(東京都町田市・協同組合経営研究所高尾分室)にて戦時の満洲移民や戦後の海外移住に関する資料の閲覧・複写を行った。外務省は第15回(2000年5月)・第16回(2000年12月)外交記録公開において戦後移民関係の記録公開を行っており、公開された文書は外交史料館にて閲覧が可能である。また那須文庫は那須皓より協同組合図書資料センター(当時)に寄贈された那須の蔵書を中心とする資料群である。那須文庫所蔵史料をもとにした研究成果が近年登場しているが(たとえば、白取道博『満蒙開拓青少年義勇軍史研究』北海道大学出版会、2008年)、戦後に射程を広げての研究は管見の限り未だ行われていない。外交史料館については2008年度より、那須文庫については2009年度より調査を行っている。また、筆者が携わっている自治体史編纂(大阪府茨木市)においても、戦後の村役場文書に移民に関する資料が含まれていることが判明した。加えて筆者は『ブラジル日本移民100年史』編纂にも関与しており、ブラジルで刊行された各種の通史類を収集することができた。なお、これら研究結果の公表については11項に掲げたとおり、学会発表2件(うち国際学会1件)、雑誌論文1件、分担著書1件(刊行予定)、その他(書評等)2件を行った。
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