研究概要 |
平成19年度の研究目的および研究計画は,1)先進的農業経営事例の調査および研究蓄積の整理,2)農業における法人経営の位置づけに関する理論の構築であった。第一の目的については,東北,北陸,中国,九州の各地域の先進的な農業経営に対する聞き取り調査を実施した。また,九州地域において,企業的農業経営者(法人経営約400件)に対するアンケート調査を実施し,経営の実態,経営者の意識をクラスター分析を用いて分析した。それにより,日本にも企業者マインドを有し,ビジネスとして農業を経営している経営者が少なからず存在することが明らかになった。 また,第二の目的については,農業経営理論を,企業的農業経営の視点からレビューした。上述のアンケート結果から明らかになったように,こんにち日本にも企業的経営が多く存在しており,従来の家族経営を前提とした理論ではなく,企業的農業経営の存在を前堤とした農業経営学の理論が必要なことを明らかにした。つまり,企業「的」農業経営の時代から,「企業農業」の時代へとパラダイムがシフトしており,新たなパラダイムに適した理論が必要であることを明らかにした。 これらの研究成果は,日本農業経営学会大会において「企業的農業経営評価における農業経営学理論の再構築に向けて」と題してシンポジウム報告し,また論文として,農業経営論集(日本農業経営学会)に発表した。また,農業経済論集(九州農業経営学会)にも「法人の農業参入:既存の農業経営からの視点」として発表した。 現在,平成20年度に向けて,米国の協力者ら(研究者,行政,ファーマーズ・マーケット・マネージャー)と連携し,個別経営に対する調査を実施中である。
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