本研究の目的は、農業における法人経営の位置づけについて、農業経営の企業形態の観点から、今日的な理論的枠組みを構築し、さらに、LLC・LLPなどの新たな法人形態を含めた、各種の企業形態の農業経営への適用可能性を実証的に検討することであった。 昨年度までに、農業経営学における法人経営の理論的整理を行い、その成果を日本農業経営学会などで発表した。また、農業法人経営者へのアンケートを実施し、日本の農業にも起業家的な経営者が少なからず出現していることが示された。そのことは、(家族経営を主たる主体として想定するのではなく)企業による農業経営の存在をより積極的に位置づけ、理論や政策に反映していくことの必要性を示した。 平成20年度においては、19年度までの成果を基に、より実証的な考察のため、事例調査を中心に研究を進めた。企業的経営だけでなく、農外からの参入企業も対象とし、さらには急速に注目が集まっている植物工場経営にも対象を広げ、企業形態、経営管理の面から実態調査を行った。会社法や農地法の改正により、企業形態、経営戦略の幅が広がりつつあり、参入や多様な展開がみられるものの、依然として企業が農業を行うには、制約が多く、企業が思うように事業展開できていない現状が明らかになった。これらのことは、農業における企業参入の是非に関する議論に、有用なデータと知見を提供し、また農業経営の経営管理の発展に有効な示唆を提示したと思われる。 それらの成果は、日本農業経営学会や農村計画学会(九州地区セミナー)、さらに一般を対象とした九州大学による公開講座などで公表した。
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