本年度の研究実施計画は、「国内需給の空間均衡状態の定量的・視覚的把握-市場間統合・分断の計量分析」であった。 カンボジアを対象国として取り上げ、国内における野菜の市場間統合・分断の程度を解明するために、IMC(lndex of Market Connection)を計測した。 対象市場はカンボジア国内に分散する野菜卸売市場11カ所であり、当該市場価格はカンボジア農林水産省マーケティング局から入手した2002年から2006年の月別卸売価格を利用した。 プノンペンにあるデウムコア市場とその他の10県にある市場間の統合・分断の程度が明らかになったが、以下に要点をまとめる。 (1)キャベツ、白菜、きゅうり、だいこん、トマトの品目別にみると、市場間の組み合わせ10個のうち市揚間統合が達成されているのは、キャベツ3市場間、白菜5市場間、きゅうり4市場間、だいこん4市場間、トマト1市場間であった。特にトマトは輸送中の品質保持が難しい品目であり、これらの流通は円滑となっていないことが明らかである。 (2)市場間の距離に着目すると、プノンペンのデウムコア市場に最も近いカンダル県のタクマオ市場では、すべての品目について、2番目に近いカンポンチャム県のバンコック市場でもトマト以外の品目について市場間統合が達成されている。しかしながら、プノンペンの市場とその他の県の市場間は分断されているケースが多くなっている。 (3)カンボジアの野菜の国内流通はプノンペン周辺の限られた地域でのみ円滑であり、国内全土に及んでこれを達成するためには、道路網の整備、輸送中の品質保持の向上等が必要であると考えられる。
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