農家レベルで必要なデータを採取するために必要な要件を検討し、データをどのように記録するのか、記録したデータをどのように蓄積するのかなどの具体的な方法を、先進的な経営を行っている農家調査を行い研究した。その結果、現状では納品書や領収証などの購入・支払い履歴により、会計データについては比較的簡易に蓄積できるが、農作業に関しては詳細な情報を記録することが大変手間になることがわかった。したがって、会計データ部分については、簿記システムの資材台帳部分に環境会計の分類を付け加え、簿記記帳時にそれを適用として登録することで、環境保全のために費やしたコストをその分類別に集計できるようにした。また、資材の投入状況などを記録することで、環境保全効果を記録・計算できるようにする台帳を設計した。一方で、環境保全に関わる作業をそうでないものと分類するためには、詳細な農作業データが必要であるが、調査の結果その記録には大変手間を要することがわかったため、それらを簡易に収集する方法を検討した。様々な手法を試みたが、最終的にはRFID、バーコード、GPSなどの技術を利用し、農作業の内容と時間、行った場所、利用した資材などをリアルタイムで簡易にサーバに記録できる装置を新たに考案し、開発した。また、環境保全型農業と慣行農業とでの使用資材、コスト、労働時間などについての差異を比較計算するために、農業技術体系DBを利用することを考え、そのリンク部分の設計を行った。 以上の結果をふまえて、環境会計を取り入れた経営管理システムの全体的な設計を行った。これについては、プロトタイプシステムを作成し、現地適用試験を通して利用者の要求定義を具体化し、農家に適したヒューマンインターフェイスやプラットフォームについて設計を行った。システムのデータ設計やアルゴリズムについて、検討を重ねた。
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