本年度は、既存研究の整理と秋田県内産地との取引を行う外食企業(B社)と、取引関係の構築に至らなかった企業(A社)を対象に、野菜調達方法の規定要因について、食材調達に関する各企業の経営戦略を中心に分析し、解明することを課題とした。その結果、取引方法の規定要因として以下の4つを明らかにした。取引方法の規定要因は、(1)生鮮野菜差別化ポイント、(2)生鮮野菜のメニュー上での扱い、(3)野菜の数量調整能力、(4)店舗の展開状況、の4点である。具体的には、(1)生鮮野菜の差別化ポイントは、A社では栽培時のリスクがある有機・特別栽培野菜を差別化の要としており、リスク回避のため全国各地の産地や中間業者とネットワークを形成し安定調達を図っている。これに対しB社では栽培方法は限定せず、自社専用品種を使用することで差別化を図っており、より差別化を強化するために直接取引を採用している。(2)メニューにおける生鮮野菜の扱いと、(3)数量調節について、A社では6品目の野菜をメニュー全体の74%に使用し、野菜の不足や過剰が発生した際の影響が大きく、ネットワーク型調達による安定調達を図っている。B社では生鮮野菜のほとんどをサラダに使用している。また、直営方式による店舗展開を図るB社では割引キャンペーン等の実施など野菜の過剰収穫問題を解消する販促活動の展開が容易であるため、直接取引が可能となっている。(4)A社では全国に店舗を展開しており、各地の産地とネットワーク型取引を実施することで食材の物流コストを抑制している。B社は62%の店舗を首都圏に集中出店しており、首都圏へのアクセスが良好な特定産地との直接取引による中間コスト削減とリードタイム短縮による野菜の鮮度保持を実現している。
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