本年度は最終年度として、研究のとりまとめを行った。昨年度に引き続き、農業と外食産業間の取引関係構築に失敗した事例について整理した。また理論的整理として、農業と外食産業間の取引関係構築に関する既存研究との関連づけを行った。 提携関係構築の不成立事例に関する現地実態調査として、秋田県内の事例を調査した。対象はJA(農協)であり、大手ファストフードチェーンとの果菜類の契約取引を行うために商談を行ったが、結果として取引は実現しなかったケースである。提携関係の構築が不成立となった要因は、 (1)相手先からの代金支払いサイト(支払周期)が長く、組合員(生産者)への精算代金支払い用の資金を内部留保する必要があり、現状のJAのシステムでは十分な対応ができないという点である。また、(2)提携関係を結んだものの、相手先企業のメニュー変更により調達する野菜の仕様変更をもとめられたものの、生産者サイドが十分に対応(技術的課題)できず、提携関係を解消するという事例や、(3)生産者が提携関係の構築により得られる取引価格の安定(従来の市場向け出荷との比較で)をメリットとして評価できず、市場出荷に切り替え、提携関係の解消を図ったケースなどがあった。 従って、代金決済問題が提携関係構築に向けての障壁となること、産地側の技術的課題と外食企業側のメニュー変更による野菜規格変更、市場取引と比較してメリットが少ないと判断されたことなどが提携解消の要因となったことが明らかとなった。 これらのケースをもとに、文献的考察を加えた上で、提携関係の程度(密度)がどのように規定されるかと提携関係構築の障壁となる要因を解明している。
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