平成19年度は、計画に基づき以下の事柄を実施した。 1 地域水田農業の構造変動にかかわる主要の農家行動として次の三つを設定した。つまり、(1)経営面積の拡大志向を持たず、米価等の経済的な変化に影響されず、年齢等の経年変化に応じて農業生産から撤退する農家、(2)経済合理的な作付計画に基づいて農業所得の最大化を志向する、いわゆる担い手農家、(3)上記二つの中間に位置し、面積の拡大志向はないが、米価水準によっては農業生産からの撤退も志向する農家である。 2 上記(1)と(3)の農家には、通常のマイクロシミュレーション手法で用いられる出生、他出、結婚、死亡等に対する年齢階層別の発生確率による行動モデルを設定した。特に(3)の農家には、米価の減少傾向と稲作の再生産価額水準に対する生産の中止等に関する発生確率も組み込んだ。 3 上記(2)の農家には、大規模米麦作経営を担い手と想定し、数理計画法に基づいて、既存の土地、労働力、資本装備等による最適な営農計画を導き出す経営モデルを設定した。このモデルに、上記(1)と(3)のシミュレーション結果から導出される農地の不作地付面積を(2)が引き受ける(土地制約の排除)という仮定の下で地域農業の構造を予測するモデルを設定した。 4 上記の一連のモデルについて、具体的なデータを用いて適用を図った結果、地域農業構造を予測するための手法としての可能性を見出すことができた一方、必要なデータ収集の方法や、モデルに組み込む農家行動の精査が課題として抽出できた。
|