研究概要 |
本研究は浄化型排水路の浄化効果について水質環境から評価することを目的とした。とくに水質浄化効果の経年変化,平水時と降雨時の効果発現,積雪融雪期の効果,浄化機能のメカニズムに着目して検討をおこなった。 水質浄化効果(平水時)の経年的変化をみると,改修直後より効果は弱まっているものの,ほぼ一定の効果が維持されている。降雨時の浄化効果について検討をおこなった結果,負荷量と流量の関係からT-Nでは0.04m^3 s^<-1>以下,T-Pでは0.002m^3 s^<-1>以下の流量で浄化効果が発現することが予測された。また,24時間の全流出量が700m^3以下では流出量の増加に伴いT-N除去率が低下する傾向が確認された。しかし,700m^3を超えて複断面の高水敷を流下する場合にも濃度が低下することから,懸濁物質の補足に植物がフィルターの役割を果たしていることが推察された。とくに水質浄化効果が顕著である窒素成分に関して水路内の窒素収支に着目してメカニズムを予測した。その結果,窒素成分の浄化の7割以上が脱窒に起因すると考えられ,植物体による吸収や吸着は2割程度と推定された。積雪融雪期の効果については,調査・検討が不十分であったが,水面が完全に結氷しない状態であれば,底質中の脱窒菌によって浄化効果が発現されると推察された。さらに改修直後と現在の水路形状の比較から,水路内の土砂の移動と流入土砂の捕捉によって,予測を上回る土砂が水路内に貯留されていることがわかった。 今年度までの成果から,浄化効果の機能発現を持続させるためには,維持管理方法についての検討が今後必要になると思われる。
|